土壌改良1(石灰の使用)

 良い土作りには、土壌の養分バランスと果樹の地下茎の生育環境を整える必要があります。石灰の使用は後者の地下茎の生育環境の改善にあたる土作りとなります。

石灰肥料による土壌改良

・石灰使用の目的
 石灰の使用する目的の大半は、酸性土壌の中和作用ですが、石灰の主成分であるカルシウムはそれ自体が植物の重要な栄養素の一つです。また、苦土石灰を使用すると葉緑素の重要や栄養素の一つである苦土(マグネシウム)の補給することができます。この他、消石灰を使用することで土壌での一定の殺虫・殺菌効果があります。

・土壌中和の効果
 酸性土壌では、植物の成長が阻害されます。特に果樹の影響を考えたとき、根の発育阻害や栄養成分の水溶性変化から地中からの養分吸収が悪くなることで、有機肥料・化成肥料による効果が低下します。
 詳しくは、姉妹サイト:園芸栽培ナビ>園芸の栽培方法(準備編)>土壌ph測定器によるph測定と調整方法(別ウィンドウで開きます)

・石灰使用の誤解
 消石灰には殺菌・殺虫作用があります。実際、鳥インフルエンザの流行がニュースで報道されると、養鶏所の消毒でに石灰が使用されます。しかし、果樹栽培において殺菌等の効果による恩恵は殆どなく、表土を消毒できる程度です。果樹栽培における石灰使用では、土壌中和と養分(アンモニアやマグネシウム)補給のみの効果を期待して使用します。

・石灰使用の注意
・石灰と肥料の同時使用
 石灰と化成肥料や養分の多い堆肥を同時に使用すると、石灰肥料に含まれるアルカリ成分と肥料に含まれる窒素が化学反応を起こし、酸性土壌への中和作用が低下します。化学反応により窒素が気化(アンモニアガスが発生)することで土壌に定着せず、肥料効果が低下します。
 また、石灰と肥料の反応により発生したアンモニアガスは作付け後では植物に害を与えるため、肥料と石灰を混ぜての使用や、石灰使用直後に肥料を使用することは出来ません。
 石灰肥料を使用後に肥料を使用する際、石灰を使用して概ね10日以上期間をあけて使用します。
 石灰肥料による化学反応等の影響では、消石灰>苦土石灰>有機石灰の順に影響が大きくなります。
 目安として消石灰の後では10日以上(14日以上が理想)。苦土石灰7日以上。有機石灰翌日以降(有機石灰については同時使用でも支障がほぼない)の期間があることが必要です。
 なお、土壌改良目的で使用される養分の少ない堆肥(バーク堆肥など)は、肥料分が少ないため石灰と同時に使用することが出来ます。

・鶏糞肥料との併用
 鶏糞肥料は有機堆肥の中でもカルシウムを多く含み、pH値が高い(アルカリ性)のが特徴です。
 このため、肥料として鶏糞を多く使用する場合、先に石灰肥料を多く使用するとpH値が高くなりアルカリ土壌(カルシウム過多)になることに注意が必要です。
 土壌pH値は、中性付近であることが望ましく、pH値が高過ぎると鉄・マグネシウム・マンガン・銅・亜鉛等のミネラルが吸収されにくくなり、ミネラル欠乏症により生育に適さなくなります。

・石灰使用量の目安
 梨の栽培では、ph6が理想的ですが、経年変化や有機肥料の使用により影響を受け毎年変化します。一般(果樹栽培仲間)に、有機肥料の使用が多い程、比例して石灰の使量用を多くします。
 管理人では、6反(5,940㎡)当り、苦土石灰25袋(500kg)を年間使用量の目安としています。

・果樹栽培における最適pH
↑アルカリ性
7.0中性
6.5-7.0 イチジク 
6.0-7.0 ぶどう、あんず
↓酸性 6.0-6.5 キウイフルーツ、柚子 桃
5.5-6.5 うめ、りんご、なし、みかん、柿、梅
5.0-5.5 栗
4.5-5.5 ブルーベリー

・石灰を使用し過ぎた時(pH値を下げたいとき)
 石灰肥料の過多や鶏糞との併用等によりpH値が高くなり過ぎたアルカリ土壌を中和したいとき。ブルーベリーの栽培で酸性土壌にしたいときは、土壌改良用硫黄紛を使用することでpH値を下げることができます。

・顆粒と粉末違い
 同じ消石灰(苦土石灰)でも顆粒と粉末タイプがあります。同じ質量でも体積が大きく違います。顆粒タイプは機械撒きにも対応し広範囲に撒き易いですが、粉末と比較して同様の成分で価格が割高となります。
 広範囲に散布が必要ない場合や、土壌の攪拌を十二分に行う場合は、割安な粉末を多く使用するほうが効果が期待できます。しかし、粉末は風で飛散し易く、風の強い日に使用することが困難となります。

・主な石灰肥料
・消石灰
 石灰岩を加工した石灰肥料。アルカリ分60%以上(約70%)。即効性であり土壌ph調整力が大きく殺菌力もある。一方で植物に与える害が大きく、園芸では主に植え付け前の元肥として使用する。
・苦土石灰
 苦灰岩を加工した石灰肥料。アルカリ分50%以上(約55%)。消石灰より土壌ph調整力が弱く、消石灰と比較して穏やか効果を発生する。消石灰に比べて植物に害を与えることが少ない。
 また、苦土(マグネシウム)を含む数少ない肥料の一つであり、苦土の欠乏による異常落葉を解消する。
・有機石灰
 貝殻を焼いて粉砕した石灰肥料。アルカリ分40~45%。遅効性であり土壌ph調整力が弱いが、土壌の通気性や水捌けを改善する効果がある。植物に害を与えないため、追肥として使用することができる。
苦土石灰の写真 ・粉末の苦土石灰
 アルカリ分55%、可溶性苦土17%内く溶性苦土11%
 灰色の質量が重く粒子が細かい粉です。
消石灰の写真 ・粉末の消石灰
 アルカリ分70%
 白色。粒子が細かい粉です。苦土石灰と比較して質量が軽いため体積が一回り大きくなります。
石灰の比較写真 ・見た目による比較
左:苦土石灰・右:消石灰
果樹園の石灰写真 ・果樹園での石灰肥料使用
 苦土石灰の粉を果樹園に散布。粉上のため均一散布は難しく白線を引いたように散布されます。
石灰と軽トラック写真 ・粉末の苦土石灰
 1袋20kg。質量が重く体積が小さいため少なく見えます。
 写真の量で、30袋600kg
 軽トラック最大積載350kgを大きく上回る量です。
石灰と有機肥料の写真 ・体積の比較 
 粉末の苦土石灰に同量となる20kgの有機肥料の袋を乗せた状態
・体積は、
 顆粒の石灰(化学肥料)の6割程。有機堆肥の7割程となります。
顆粒状の石灰肥料と手押し機肥料散布機 ・手押し式肥料散布機による使用
 手押し式肥料散布機を使用して均一に石灰肥料を散布します。
 肥料散布機を用いるとき、石灰の形状が粒状でないと拡散させることでできません。
・石灰使用の効果確認
 使用した石灰の効果を確認するにはPH測定をすることで解ります。測定方法は、姉妹サイト:園芸栽培ナビ内、「土壌ph測定器によるph測定と調整方法」にて紹介しています。 
農業の土づくり
 ・土作りのバランスについては、土作りの考え方
  ・堆肥の使用については、有機肥料の使用1
   ・石灰を用いた中和について、土壌改良1(石灰の使用)
    ・化学肥料の使用
     ・高度化成肥料の使い方
      ・トラクター管理機の効果については、土壌改良2
       ・油粕の使用については、果樹を甘くする有機肥料の使用
 土壌の酸性度(PH)測定に関することは、
 姉妹サイト:園芸栽培ナビ>土壌ph測定器によるph測定と調整方法(別ページで開きます)

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