落ち葉処理

 落葉により土壌に堆積した落ち葉は、腐敗すると良質なたい肥に生れ変わり一見有益なものです。しかし、梨をはじめ果樹栽培において落ち葉は病原菌や害虫の越冬場所(温床)となるため、適正に処理を行う必要があります。
・落ち葉による影響
 果樹を始め野菜を含めた多くの作物において、落ち葉には病原菌や虫(害虫、益虫)が付着しています。
 園内で耕作地等に積もった落ち葉は、これら病原菌や害虫等の温床となり、越冬や繁殖(増殖)場所となります。
 梨の栽培では、果実等の大きな被害をもたらす黒星病対策として落ち葉を処理します。黒星病では、落ち葉は病原菌の越冬場所(一次感染源)となり、翌年の春に胞子を飛ばすことで感染が広がります。

・落ち葉の主な処理方法と効果
①園外に運び出す
 落ち葉を集め、農園の外に運び出して処分を行います。
 園外まで運び出せば、腐葉土となるまで放置し、後に堆肥として有効活用をすることができます。
②地中深くに埋める
 園に深い溝(20~30cm程)等を掘り、落ち葉を入れて土を被せて完全に埋設します。トラクター等の耕うん範囲より深く埋めることで、落ち葉が露出することなく、園内で問題が発生することなく堆肥化することができます。
 しかし、深く掘る作業のため専用の機械がないと非常に多くの労力を必要とします。
③土壌でトラクター等で耕す
 土壌の地表面をトラクターで耕うんにより、土と落ち葉を撹拌することで地中の浅い範囲に落葉を埋めます。
 手軽に作業を行える一方で、落ち葉が地表に露出しやすく、ある程度は落ち葉による影響を受けます。
④草刈り機による粉砕処理
 梨の黒星病対策としての新たな落葉処理技術として、自走式草刈機により落葉を粉砕処理を行います。
 落葉を粉砕することで胞子飛散量が減少し、(一次感染源からの)翌年の春の黒星病発生を軽減することができます。詳しくは、梨の病気被害と対策 > 黒星病 > ナシ黒星病対策専門資料>「ナシ黒星病対策の落葉処理」にて紹介しています。

 ②・③の方法では、土壌内に有機分を直接補給するため、地中の菌やバクテリア、ミミズ等の餌となることで地力の活性化が期待できます。しかし、白紋羽病の懸念がある土壌では、発症原因となることがあります。(本ページ下部にて補足)
 ①の方法では、落ち葉に米ぬか等を加えるなど手を加えることでより優れた堆肥を作ることができます。

(ロータリー)トラクターによる落ち葉処理

落ち葉処理写真 落ち葉集め
 トラクターの走れない木の際や、支柱の際の落ち葉を通路に集めます。
 写真では熊手(ベブラ)を使用しています。ベブラの他、必要があれば風で吹き飛ばさすブロアを使用します。
集めた落ち葉写真 通路に集まめた落ち葉
 木の際の落ち葉をトラクターが通る範囲に集めました。
埋めた落ち葉写真 トラクター使用後
 土と撹拌され、大半が地中に埋まりました。地中に埋まることにより、葉の分解が促されるとともに病気の胞子が拡散しません。
 溝を掘り、より深く埋めると効果が高まりますが労力がかかるため設備や規模にあった範囲と方法で行います。
落ち葉以外の土壌との撹拌
 土壌改良や有機分の補給を目的に、もみ殻や麦や米の藁を土と撹拌することがあります。もみ殻や藁については、病原菌や害虫等の付着が比較的少なく、特に使用した藁等と異なる作物での使用では、害虫や病原菌による悪影響をあまり気にせずに使用することができます。

白紋羽病発症の懸念
 土壌内で感染・発症する白紋羽病は、落葉や樹皮や草。藁や等の粗大有機物が病原菌の餌となること助長し、発症につながることがあります。
 しかし、白紋羽病の発症は単に粗大有機物のみが原因ではなく、土壌pH(PHが高い)や土壌湿度(水捌けが悪い)。樹木の樹勢(樹勢が衰えている)など様々な要因により発症します。
 自然発生した落ち葉以外に粗大有機物(藁やおが屑。未発酵や発酵不十分の糞肥料など)を追加する行為は、土壌内の有機物が過多とならないよう注意が必要です。
 また、過去に白紋羽病が発症した土壌。周囲で発症している場合には、特に注意が必要です。

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