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カメムシ防除農薬の残効性

 果樹に加害するカメムシ類には、チャバネアオカメムシ(緑の体に茶色い羽)、ツヤアオカメムシ(緑の体)、クサギカメムシ(茶色い体)等がいます。
 カメムシ類に効果の高い農薬は、ダントツ水溶剤やモスピラン水溶剤に代表されるネオニコチノイド系と、テルスター水和剤などの合成ピレスロイド剤、スミチオン乳剤等の有機リン系があります。
 しかし、残効性や耐雨性に大きく差があるためカメムシの飛来が多い果樹園では注意が必要です。
 特にネオニコチノイド系と合成ピレスロイド剤に高い残効性が確認されています。

殺虫剤(農薬)のカメムシ類に対する残効性

直接殺虫効果

薬剤名 希釈倍数 死亡割合      
2時間後 1日後 2日目
合成ピレスロイド剤   
テルスター水和剤 1000 10割 - -
マブリック水和剤 4000 9割 9割 9割
スカウトフロアブル 1500 10割 - -
トレポン水和剤 2000 9割 10割 -
有機リン系
スミチオン水和剤 1000 9割 10割 -
調査方法:供試虫(チャバネアオカメムシ)に対して噴霧器で薬剤を虫体から滴り落ちるまで散布して時の死亡状況。
薬剤名 希釈倍数 死亡割合      
1日 2日
合成ピレスロイド剤   
アディオン水和剤 2000 10割 -
テルスター水和剤 1000 10割 -
ロディー水和剤 1000 10割 -
バイスロイドEW 2000 10割 -
アグロスリン水和剤 1000 7割 10割
スカウトフロアブル 2000 6割 7割
サイハロン水和剤 2000 3割 2割
マブリック水和剤 2000 2割 2割
カーバメート系
オリオン水和剤 1000 10割 -
デナポン水和剤 800 9割 9割
ラービン水和剤 1000 0割 1割
ネオニコチノイド系
アドマイヤー水和剤 2000 10割 -
モスピラン水和剤 2000 10割 -
有機リン系
スミチオン水和剤 800 10割 -
スプラサイド水和剤(製造中止) 1500 10割 -
エルサン水和剤 1000 10割 -
ダイアジノン水和剤 1000 10割 -
トクチオン水和剤 800 3割 8割
ダーズバン水和剤(製造中止) 1000 2割 6割
有機リン系+合成ピレスロイド剤
パーマチオン水和剤 1000 10割 -
調査方法:クサギカメムシ越冬中の各種殺虫剤に対する感受性(虫体浸漬処理)。

残効による殺虫効果

薬剤名 希釈倍数 死亡割合      
1日目 3日後 5日目 10日目 15日目
合成ピレスロイド剤
テルスター水和剤 1000 10割 10割 4割 8割 8割
マブリック水和剤 4000 9割 9割 2割 9割 1割
スカウトフロアブル 1500 1割 0割 1割 2割 -
トレポン水和剤 2000 6割 6割 2割 2割 -
有機リン系
スミチオン水和剤 1000 6割 6割 5割 0割 0割
調査方法:カキ果実1果に対して5頭の成虫を袋に入れて接種し、3~4日目に虫を回収しての死亡状況。
希釈倍数 死虫数          
1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 合計
合成ピレスロイド剤  
アディオン水和剤 2000 9 5 3 5 5 3 3 1 34
テルスター水和剤 1000 11 5 2 3 3 2 1 1 28
ロディー水和剤 1000 10 2 3 1 1 0 0 0 17
アグロスリン水和剤 1000 6 1 0 - - - - - -
バイスロイドEW 2000 4 2 0 - - - - - -
マブリック水和剤 2000 1 1 1 - - - - - -
サイハロン水和剤 2000 0 0 0 - - - - - -
スカウトフロアブル 2000 0 0 0 - - - - - -
カーバメート系
オリオン水和剤 1000 0 0 0 - - - - - -
デナポン水和剤 800 0 0 0 - - - - - -
ラービン水和剤 1000 0 0 0 - - - - - -
ネオニコチノイド系
アドマイヤー水和剤 2000 0 0 0 - - - - - -
モスピラン水和剤 2000 0 0 0 - - - - - -
有機リン系
スミチオン水和剤 800 12 12 12 6 5 4 2 3 56
スプラサイド水和剤(製造中止) 1500 7 7 8 5 5 4 1 2 39
ダイアジノン水和剤 1000 0 4 9 7 6 3 1 3 33
エルサン水和剤 1000 9 4 5 5 0 1 1 1 26
ダーズバン水和剤(製造中止) 1000 0 2 4 3 3 0 0 0 12
トクチオン水和剤 800 1 0 1 - - - - - -
有機リン系+合成ピレスロイド剤
パーマチオン水和剤 1000 1 0 3 3 6 2 4 2 21
調査方法:クサギカメムシ越冬中の各種殺虫剤に対する感受性(リンゴ果実浸漬処理後放飼)。死虫数の生虫を補って12頭(雄雌各6頭)を放飼。

薬剤効果の概要

 上記表の他の様々な資料を確認すると、直接殺虫効果については多くの薬剤で高い効果が期待できます。
 残効による効果では、有機リン系殺虫剤3日未満(1~2日)。ネオニコチノイド系殺虫剤・合成ピレスロイド剤殺虫剤では7日未満(10日~14日)期待でる資料がある一方で、有機リン系殺虫剤の残効が長く合成ピレスロイド剤殺虫剤が低い資料があるなど各種条件により効果に差があることが判ります。
 殺虫効果の他、降雨があった場合の吸汁抑制効果が特に大きく変化し、降雨があった場合にテルスター水和剤(合成ピレスロイド剤殺虫剤)が降雨量200mmまで吸汁抑制効果がある一方、アルバリン顆粒水溶剤(ネオニコチノイド系殺虫剤)は降雨量50mmで吸汁抑制効果が大きく低下します。

果樹のカメムシ類に効果のある主な薬剤

・ネオニコチノイド系

 ダントツ水溶剤
 アルバリン顆粒水溶剤・スタークル顆粒水溶剤
 モスピラン顆粒水溶剤
 アドマイヤー水和剤(顆粒水和剤、フロアブル)
 アクタラ顆粒水溶剤
 バリアード顆粒水和剤
 アドマイヤー水和剤(フロアブル)

・合成ピレスロイド剤

 アディオン水和剤(乳剤、フロアブル)
 テルスター水和剤(フロアブル)
 ロデイー水和剤(乳剤)
 スカウトフロアブル
 マブリック水和剤
 トレポン水和剤
 合成ピレスロイド系薬剤は土着天敵(ハダニ類ではカブリダニ類、カイガラムシ類ではフジコナカイガラクロバチなど)への影響も大きく、ハダニ類やカイガラムシ類の多発を招くことがあり。使用には注意が必要です。

・有機リン系

 スミチオン水和剤40・スミチオン乳剤
 サイアノックス水和剤
 スプラサイド水和剤(販売終了)
 エルサン水和剤(乳剤)

・ジアミド系

 テッパン液剤

カメムシ類の生態と効果的な防除方法

 果樹のカメムシは常緑樹の落ち葉やの下、常緑樹の樹上、樹皮の隙間で越冬し、夏期のスギやヒノキ等の球果をえさとします。
 越冬数が多いと春から夏(4~7月)にかけて果樹園に飛来し、果実吸汁による落果被害や奇形果が発生します。また、その年に孵化したカメムシは夏から秋(8月~10月)にかけて果樹園に飛来します。
 果樹では、もも、うめ、なし、かき等が被害を特に受けやすく、次いで多発するとかんきつ類やぶどうも被害を受けます。
 果樹のカメムシ類は夕方から活発に活動し、日没後の2~3時間に果樹等に多く飛来します。
 飛来を確認したら、機を逃さず初期段階で薬剤散布による防除を行います。
 これは、カメムシの雄が定着すると集合フェロモンを出すことで仲間を呼び寄せるためであり、防除が遅れ平数が多く(高密度に)なると防除効果を十分に得ることが出来なくなる恐れがあるためです。

その他の防除・対策の方法

 果樹園のカメムシ類の飛来を防ぐには、果樹園周囲の目の細かい網(防風ネット)で覆うことで物理的に飛来を抑制することができます。
 また、果実の吸汁被害は有袋栽培(袋がけ)をすることで軽減することが出来ます。
 薬剤防除では、果樹園を防風林で囲っている場合は防風林にも薬剤散布を行う。また、防風林の除草では下草に殺虫剤を使用するなどの方法も効果が期待できます。
カメムシ類
 ・カメムシ類防除の農薬については、カメムシ防除農薬の残効性へ

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