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カブリダニ類を活用する草生管理の問題

 果樹栽培においてハダニ類の天敵であるカブリダニ類(土着天敵)を活用するための下草を残す草生管理等による栽培方法では栽培環境により様々な問題が発生します。
 実際に取り入れるためには現行の栽培方法やハダニ以外の各種害虫などの発生状況とその駆除方法に照らし合わせ、問題点についての代替方法の検討が必要となります。

草生管理を行った時の問題

 果樹栽培においてカブリダニ類の活用を目的とした草生管理を実際に行うと、多くの点で果樹の栽培方法に見直しが必要となります。
 管理人が実際に行った際に発生した各種問題と予測され問題です。

・カバープランツを維持する問題
 カバープランツにクローバーを用いた草生管理を実施したところ、クローバーを維持するためトラクターや除草剤の使用ができない(使用を減らす)問題が発生しました。
 トラクターの使用については、冬季に黒星病防除を目的として。春から夏にかけて有機肥料を活用するために特に春から夏に使用することでカバープランツのクローバーが駆逐される問題が発生しました。
 除草剤の使用でも同様にカバープランツのクローバーが駆逐される問題が発生しました。
 カバープランツが繁殖することで除草剤の使用を控えること容易です。しかし、春から夏のトラクター使用を控えることは有機肥料の肥効の観点として難し問題となりました。
 このため、カバープランツのクローバー維持では種を継続的に購入する必要が見込まれました。

・下草によるカミキリムシ類による幹の食害発見の遅れ
 カミキリムシ類幼虫による食害は、おが屑が発生することで発見することができます。草生管理により下草を残すことで果樹の根元を中心とした幹へのカミキリムシ類幼虫による食害の発見が遅れる原因となります。

下草による薬剤防除効果の低下と特定薬剤が使えない影響

 草生管理による下草は、下草に生息する害虫等に対しての薬剤防除の効果が大きく低下します。特に朝方から長い時間夜露が残るため、午前中での薬剤防除の低下が大きく懸念されます。
 また、合成ピレスロイド剤や有機リン系の効果が高い殺虫剤を使用できないことで更に薬剤防除での効率が悪くなります。
 合成ピレスロイド剤は特に悪影響が大きく、1回の使用でカブリダニ類を壊滅的に駆逐するため使用をやめなければいけません。
 代表的な合成ピレスロイド剤には、アグロスリン、アディオン、スカウト、テルスター、マブリック、ロディーなどがあります。
 テルスター、ロディー等の薬剤はハダニ類だけでなく幅広い害虫に対して高い効果があるため、薬剤防除での省力化に大きく貢献している重要は薬剤です。
 合成ピレスロイド剤のテルスター、ロディー等の使用をしないことで、殺ダニ剤と殺虫剤との混用や別に散布が必要となり労力が大きくなります。

 有機リン系殺虫剤はカブリダニ類への悪影響が大きいため使用を控える必要があります。代表的な有機リン系殺虫剤には、エルサン、サイアノックス、スミチオン、スプラサイド、ダイアジノン、ダーズバン、マラソン等がありこれらを控えることが必要となります。

・カミキリムシの成虫防除
 生命力が強いカミキリムシ類の成虫の防除では、効果的な薬剤に有機リン系の殺虫剤が多くあります。
 カミキリムシ類の成虫の防除では、飛来する時期での薬剤防除が重要となります。飛来数が少ない地域では他の薬剤による代替え措置も可能ですが、飛来数の多い地域で有機リン系殺虫剤を全て代替えすることは難しい問題となりました。
 なお、管理人の栽培地域は防風林として松の栽培が多く、松のマツクイムシとしてカミキリムシの被害が多く発生する地域でした。

・カイガラムシの防除
 難害虫であるカイガラムシの防除では、幼虫期となる6~8月にスプラサイド剤(スプラサイド水和剤・スプラサイド乳剤)による防除が非常に重要となります。
 カイガラムシ幼虫防除に関するスプラサイド剤に変わる薬剤がないため、マシン油等を用いた防除が必要となります。

・シンクイムシ類の防除
 収穫期までの長期間の防除が必要となるシンクイムシ類の防除では、薬剤防除を行うと期間中に多くの殺虫剤が必要となります。代替え対応が可能な範囲ですが合成ピレスロイド剤を除くことで薬剤の選択の幅が狭まります。
 また、下草があることでシンクイムシ類の成虫の薬剤防除効果が低下します。
 殺虫剤による薬剤防除効果が低下に対する代替え対応として、フェロモン剤でるコンフューザN等への転換が必要となることがあります。

・吸蛾類(吸収性夜蛾)の防除
 収穫期に防除が必要となる吸蛾類の防除では、シンクイムシ類と同様に合成ピレスロイド剤を除くことで薬剤の選択の幅が狭まります。また、下草により成虫に対する薬剤防除効果が低下します。
 薬剤防除に頼らない電燈照明を用いた活動の抑制等への転換が必要となることがあります。

・アブラゼミの防除
 梨の果樹園に発生するアブラゼミは、通常の発生では積極的な薬剤による防除を必要としません。しかし、稀に異常発生があると、産卵により果皮に挿し刺し傷を作る。長期に渡り根からの吸汁により樹勢が低下するなどの害が予想されるため薬剤による駆除が必要となります。
 効果的な薬剤では合成ピレスロイド剤であるアグロスリン。その他、適用害虫に記載がないものの同じく合成ピレスロイド剤のアディオン、スカウト、テルスター、ロディーなどが効果があります。
 合成ピレスロイド剤を用いない場合、異常発生の早期に幼虫を捕獲する捕虫器を用いる。継続的に産卵痕を処分(駆除する)し、異常発生とならないようにすることが必要です。しかし、飛来するアブラゼミに対しては効果的な手段がありません。


果樹のハダニ類防除
 ・草生管理での弊害は、カブリダニ類を活用する草生管理の問題
  ・殺ダニ剤の使用は、殺ダニ剤の薬剤効果
   ・難害虫のナミハダニは、ナミハダニの農薬による駆除

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