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ナスの育て方 失敗しないための原因と対策

 園芸におけるナスの栽培では様々な原因で生育が上手くいかずに失敗することがあります。失敗した原因が解らないと効果的な対策をとることが出来ません。失敗した状況から推測する原因と具体的な対策方法をチャート方式で判断します。

ナス栽培の失敗原因と対策

症状:苗定植1~2か月で急激に生育が悪化。立ち枯れがあるなど。
Q1.栽培場所で過去5年以内にナス科※の栽培をしていた。
※ナスの連作障害では、ナスだけでなく、トマト・ピーマン・シシトウ・パプリカ・トウガラシ・ジャガイモの栽培全てが当てはまります。
YES Q2.ナス苗は自根苗か接木苗か?
自根苗 連作障害
接木苗 Q3へ
NO Q3.晴天多く最高気温が30℃を超える日が多い
YES Q4.園芸用黒マルチを使用している
  YES Q5.ナスの生育が悪いが同じ条件のキュウリの生育は良い 
YES Q6.ナスの日当たり非常に良い
YES 根への熱害が原因
  NO Q7へ
  NO Q7.茎が途中で折れたように枯れている。
YES 害虫か野ネズミによる茎への食害 
  NO Q8.畝全体のナスが同様に衰弱している 
YES Q12へ 
  NO Q8-1.衰弱している苗を引っ張ると簡単に抜けて根が少ない
   YES コガネムシ幼虫による食害
   NO Q12へ 

症状:茄子の実が実り始めてから生育が悪化した。
 Q9.1~2番花の結実を大きく育ててから収穫した。
YES 実りの負担が大きすぎたことが原因
NOB Q10.実り始めてから追肥を行った。
   YES Q11.追肥は化成肥料を使用した。
YES Q12.雨天及び散水による十分な水があった
YES Cへ
NO 肥料焼けが原因
NO 肥料効果の遅延
  NO 肥料切れによる樹勢の低下が原因

症状:ナスの樹勢が弱い。葉の厚みがない。葉の色が薄い
Q12.土作りに土壌PHの測定を行った。
YES Q13.PH調整では石灰肥料に消石灰のみ使用した。  
  YES Q14.元肥は化成肥料を中心に使用した。   
    YES 3大要素以外の養分欠乏が原因
    NO Q15牛ふん・鶏糞などの堆肥を使用した。
       YES Q16.市販の堆肥をそのまま使用した。 
    YES 堆肥の発酵不十分による害が原因
        NO 土壌が固くなったことが原因Q24へ
     NO Q17.油かす肥料を中心に使用した。  
      YES 3大要素の養分欠乏が原因 
      NO マグネシウム欠乏が原因土壌が固くなったことが原因
   NO Q18.調整では石灰肥料に苦土石灰を使用した。     
    YES 石灰肥料過多によるアルカリ傾向石灰肥料の不足による酸性土壌
    NO Q19.有機石灰肥料のみを使用した。
      YES Q20.PH調整前の値は大きく酸性土壌であった(値5.5以下
        YES 肥効の遅れによる酸性土壌
        NO マグネシウム欠乏が原因
NO Q21.前年に同じ場所で作物の栽培を行った。   
  YES Q22.前年に育てた作物は健全に育った。
    YES Q23.前年に育ては作物はナス科(ピーマン・トマト・ジャバイモを含む)であった。
    YES Q1へ 
    NO 土壌PH乱れQ23へ・地力の衰えQ24へ・土壌が固くなったことが原因Q24へ
  NO Q23.周囲にスギナが生えている。
    YES 石灰肥料の不足による酸性土壌
    NO 土壌PH乱れQ12へ・地力の衰えQ24へ

症状:ナスの樹勢が弱い
Q24.土作り例年牛ふん堆肥、腐葉土を使用している。(鶏ふん堆肥は含まず。)
YES Q25.化成肥料を併用して使用している。
  YES Q1又はQ12へ
  NO Q26.鶏ふん肥料のみ併用している。
    YES 窒素の欠乏が原因鶏ふん肥料過多によるアルカリ傾向Q12へ
    NO 3大要素の養分欠乏が原因  
  NO Q27.油粕肥料を併用している。
    YES 加里の欠乏が原因
    NO 3大要素の養分欠乏が原因  
NO Q28.もみ殻使用し地中内にすき込んで耕している。
  YES Q29地面を丁寧に耕したとき、畝立しない状態で空気を含み耕さない箇所と5cm以上の段差が出来る。
    YES 3大要素の養分欠乏が原因土壌PH乱れQ12へ
    NO 土壌が固くなったことが原因
  NO 土壌が固くなったことが原因
用語の定義
・ナス→栽培植物のナスを差す。
・茄子→栽培植物から実った野菜「なすび」を差す。

問題点と対策

連作障害
 ナスの連作障害は、深刻な影響がある作物の一つです。連作障害では、土壌病原により「青枯れ病」・「半身萎凋病」が発症します。この他、ホウ酸・鉄・マンガンの欠乏が起きます。
 専用の殺菌作業等を行わない場合、影響年数も長く、回復には自根栽培で5~7年の輪作(休栽期間)が必要です。また、連作障害の影響は単にナス栽培だけでなく、ナス科のトマト・ピーマン・シシトウ・パプリカ・トウガラシ・ジャガイモの栽培全てが当てはまります。

根への熱害が原因
 ナス栽培で園芸用黒マルチを使用して場合、日当たりが良すぎる環境にあると日光により黒マルチ内部が高温となるためナスの根に熱害が発生します。
 熱害の有無の判断として、日当たりの悪い箇所の生育が良い。同じ畝に作付けしたキュウリの生育が良いなどの特徴があります。
 黒マルチの使用方法を確認をして下さい。「園芸の栽培方法(準備編) > 黒マルチの使い方」へ

堆肥の発酵不十分による害が原因
 市販されている発酵済み堆肥は、必ずしも十分に発酵しているものばかりではなく、発酵が不十分なものが含まれていることがあります。
 未開封の堆肥は発酵状態が停止し、期間が経過していても発酵が進みません。開封時に匂いが残っている場合、発酵が不十分のため作物に害を与えて樹勢低下する大きな原因となります。堆肥の使用方法と注意点を確認して下さい。「園芸の肥料>牛ふん、鶏ふん堆肥の使い方」へ

害虫か野ネズミによる茎への食害 
 茎等が折れたようにしてその先が枯れている場合、虫等による食害の可能性が大きいです。主な害虫といてナメクジ、フキノメイガ、野ネズミ等による被害があります。駆除方法については、「園芸の栽培方法(育て方)>ナメクジ退治」、「なすの育て方>フキノメイガの防除方法」へ

コガネムシ幼虫による食害
 コガネムシは成虫が飛来して土の中に卵を産み付け、幼虫は作物の根を食害します。見た目に大きな変化がないため発見が遅れます。発生時期として7月~10月頃。初期症状として、水を与えると一時的に生育が回復するが、すぐに弱るという症状が現れます。
 弱ったナスを引っ張ると容易く抜け、根が食害により大きく欠損しています。

実りの負担が大きすぎたことが原因
 ナスの栽培では、苗及び定植直後から花芽をつけ結実するとがあります。実りに十分に成長していない段階での結実は大きな負担を与えることで樹勢が低下する原因となります。初期では花芽を取るなどして無駄な養分を消費しないことで防ぐことができます。

肥料効果の遅延
 有機肥料の効果は遅効性のため効果が表れるまでに時間がかります。このため、養分が必要な時期に効果を得るためには化成肥料の使用が適しています。
 追肥に適した肥料の種類と追肥の時期を確認して下さい。「園芸の栽培方法(育て方)>園芸の肥料(追肥)」へ

肥料焼けが原因
 化成肥料を根元等に直接散布すると、肥料濃度が高くなり過ぎて肥料焼けにより根や根元に害を与えます。肥料は根元からある程度離し位置に使用します。
 追肥方法などを確認して下さい。「園芸の栽培方法(育て方)>園芸の肥料(追肥)」へ

肥料切れによる樹勢の低下が原因
 作物の結実等の時期は、養分を大きく消費するために肥料切れにより樹勢の低下。病気抵抗の低下などの影響が現れます。養分が必要な時期には即効性の化成肥料の使用。または、早い段階で十分な有機肥料を使用します。
 追肥を行う時期と追肥方法などを確認して下さい。「園芸の栽培方法(育て方)>園芸の肥料(追肥)」へ

3大要素以外の養分欠乏が原因
 作物の生育には、窒素・リン酸・カリの他に微量成分として扱われる各種ミネラルや、土壌内にある有機物を分解する微生物が必要となります。化成肥料を中心とすると、これらミネラル類や微生物が減少することにより生育が悪くなります。
 ミネラル、微生物の補給については、の補給では、堆肥等の有機肥料の使用が有効です。有機肥料の使用した時の効果について、各堆肥の特徴を確認下さい。「園芸の肥料>牛ふん、鶏ふん堆肥の使い方」へ

マグネシウム欠乏が原因
 葉の葉緑素を作る重要な養分苦土(マグネシウム)は酸性土壌程流出し易くなります。特にナスの栽培では、苦土(マグネシウム)を多く必要とします。
 苦土(マグネシウム)の補給では、土作り土壌中は作業において石灰肥料に苦土石灰を使用する。この他、天然のにがり、硫酸マグネシウム、溶燐(ようりん)肥料により補給することができます。

土壌が固くなったことが原因
 作物栽培を続けると土壌は徐々に固くなるため、耕してもすぐに固まり根の生育が悪くなります。
 土壌に空気等の隙間を作るために植物繊維等を適度に含む必要があります。もみ殻、藁、消化した植物繊維を多く含む発酵牛ふん堆肥、木片等のバーク堆肥を使用すると土壌に空気を含み柔らかくなります。

窒素の欠乏が原因
 鶏ふん肥料は養分を多く含む有用な有機たい肥です。しかし、窒素・カリの含有量が少なく、消費量の多い窒素分の欠乏を起こすことがあります。
 鶏ふん肥料を中心とした元肥を行った場合、有機肥料では窒素分の多く含む油かす肥料の併用により窒素欠乏を予防できます。

鶏ふん肥料過多によるアルカリ傾向
 鶏ふんは有機肥料の中で酸度が中性に近いアルカリ肥料です。これを考慮せずに石灰肥料により土壌のPH調整を行うと、鶏ふんによる効果でアルカリ方向となり最適PHから逸脱します。異常が疑われる場合、一度PH測定を行い現状を確認することが大切です。
 PHの変化が与える影響と測定方法はについては、「園芸の栽培方法(準備編) >土壌ph測定器によるph測定と調整方法」へ

石灰肥料過多によるアルカリ傾向
 消石灰・苦土石灰は使用した分だけ確実にPHをアルカリ方向に傾けます。際限なく多く使用するとPH値が最適PHからアルカリ方向に逸脱することで生育が悪くなります。異常が疑われる場合、一度PH測定を行い現状を確認することが大切です。
 PHの変化が与える影響と測定方法はについては、「園芸の栽培方法(準備編) >土壌ph測定器によるph測定と調整方法」へ

石灰肥料の不足による酸性土壌
 苦土石灰は消石灰と比較してアルカリ方向への中和効果が弱い肥料です。長期間耕作していなかった土地では、土壌PH値を予測し難い状態です。スギナは強酸性の土壌で育つ雑草です。スギナが生育している場合、強い酸性土壌であるため、通常と同じ量の石灰肥料を使用しても不足傾向となります。

3大要素の養分欠乏が原因 
 有機肥料はミネラルを含む有用な肥料です。しかし、窒素、リン酸、カリの3大要素の含有率は化成肥料と比較すると少なく、含有する成分に偏りなどの特徴があります。このため、有機肥料のみ十分な養分を補給するために、肥料毎に含有する比率の考慮だけでなく、肥料使用が多く必要となります。

加里の欠乏が原因
 油かす肥料は、窒素とリン酸補給を目的とした肥料のため、カリの含有率が低く肥料です。カリ(カリウム)の補給では、有機肥料では草木灰(草を燃やした時の灰)等に多く含まれます。しかし、多くの有機肥料で含有率が比較的少なく、化成肥料等による補給が効果的です。化成肥料では、オール8、オール14等の他、専用の肥料として塩化カリウム肥料があります。
 油粕肥料について詳しくは、「園芸の肥料>油粕に発生する白いカビと肥料効果」へ

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