心腐れ症の薬剤防除 

 梨の芯腐れ病の大半は胴枯れ病菌によるものであり、薬剤防除では胴枯れ病菌に対する防除に主眼をおいて行います。

・防除時期
 開花後から幼果期の間。
・防除の方法
 芯腐れ症の主な病原菌は胴枯病菌であるため、胴枯病菌に効果のある薬剤により防除を行います。

心腐症に対する防除効果など

効果が期待できる主な薬剤
商 品 名 成 分 名 予防
効果
種  別 備 考
デランフロアブル ジチアノンフロアブル 94 その他  
ジマンダイセン水和剤 マンゼブ水和剤 82 有機硫黄系(ジチオカーバメート系) 新葉に薬害※4
パルノックス水和剤 ジラム・チラウム水和剤 80 有機硫黄系 生産終了
ベンレート水和剤 ベノミル水和剤 76 ベンゾイミダゾール系  
トップジンM水和剤 チオファネートメチル 76 ベンゾイミダゾール系  
チオノックフロアブル
トレノックフロアブル
チウラム水和剤 74 有機硫黄系 着果率の低下※5
キノンドーフロアブル
ドキリンフロアブル
有機銅水和剤  74 有機銅系統  
ファンタジスタ顆粒水和剤 ピリベンカルブ ※3 QoI剤(ベンジルカーバメート系)
スクレフロアブル マンデストロビン QoI剤(メトキシアセトアミド系) 公表された試験データがなく効果不明
積極的な効果が期待できないが多少効果がある薬剤
ユニックス顆粒水和剤47 シプロジニル水和剤 43 AP剤 花弁に薬害※6
ベルクートフロアブル イクノクタジンアルペジル酸塩水和剤 27 グアニジン系  
オーシャイン水和剤 オキスポコナゾールフマル酸塩水和剤 17 DMI剤  
ビスダイセン水和剤 ポリカーパメート水和剤 16 有機硫黄系  
効果がほぼないとされる主な薬剤    
アンビルフロアブル ヘキサコナゾール水和剤 - DMI剤  
ラリー水和剤 ミクロブタニル水和剤 - DMI剤  
ラブラール水和剤 イプロジオン水和剤 - ジカルボキシミド  
アミスター10フロアブル アゾキシストロビン - QoI 剤  
アフェットフロアブル
フルーツセイバー
ペンチオピラド水和剤 - SDHI剤  
・薬剤の予防効果の指数は、公表されている少ない検証データから複数の資料の防除価を指数化したため、実際の効果に関する一般的な解釈と食い違いがあります。
 通常、トップジンM水和剤 >デランフロアブル > ベンレート > チオノックフロアブル(トレノックスフロアブル)の順に効果が高いとされています。

 黒星病との防除の兼ね合いから、パルノックス水和剤の生産終了に伴う代替え薬剤としてチオノックフロアブル(トレノックフロアブル)が用いられています。
 チオノックフロアブル(トレノックフロアブル)は、パルノックス水和剤と比較して心腐れ症の予防効果が低下しているため、これを補うためベンレート水和剤やトップジンM水和剤を用いることが多くの地域で推奨されています。

※3ファンタジスタ顆粒水和剤の芯腐れ症に対する効果
 調べた範囲で数値化され公表された試験データを発見できない状態です。
 鳥取県農林総合研究所の平成25年度業務年報において「新規登録農薬であるファンタジスタ顆粒水和剤のナシ病害に対する防除効果を明らかにする目的で、今回の試験ではナシ心腐れ症(胴枯病菌)に対する防除効果を確認した。その結果、ファンタジスタ顆粒水和剤は、対照薬剤のチオノックフロアブルと比べて劣る防除効果であり、今回の試験では防除効果は認められなかった。」と記載されています。

※4ジマンダイセン水和剤の新葉への薬害
 芯腐れ症、黒星病に防除効果があるが幸水・長十郎の新葉に薬害が確認されています。芯腐れ症予防効果を期待しての使用では、りん片脱落期~出蕾期までに使用しての残効に限ります。新葉の期間(4月の開花から5月末頃まで))の使用には適しません。

※5チオノックフロアブル(トレノックフロアブル)使用による着果率低下の影響
 チオラム剤である商品名:チオノックフロアブル・トレノックフロアブル(JA販売での商品名)の防除では、花粉の発芽率が低下することで着果率の影響があることが確認されています。
 同剤の散布の着果率低下は、散布日当時が特に大きいため人工授粉当日。及び満開日当日での使用を避けて使用します。

※6ユニックス顆粒水和剤47の花弁への薬害※6
 4月上旬(開花直前)に使用すると花弁に薬害を生じる恐れがあります。

 詳しくは、果樹栽培ナビ ブログ > 梨の着果率がチオノックフロアブル(トレノックフロアブル)で低下。満開日と受粉作業日の使用はさける。(別ウィンドウで開きます)
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