ナシ黒星病対策の落葉処理

 梨の黒星病に感染した落ち葉は病原菌が越冬し、翌年に胞子を飛散して黒星病が発病します。胞子が飛散しないよう、落ち葉は適切に処理することが重要となります。
 落ち葉の処理では、園外への持ち出し。地中深くに埋める。草刈機による粉砕処理。トラクター(ロータリー)による地中へのすき込みによる方法があります。
・落ち葉による黒星病への影響
 春季に発生する黒星病の主な一次感染源では、「芽基部りん片」と「落ち葉」に潜伏する2種類があります。
 黒星病に感染した葉は、落葉により地表に堆積した状態で黒星病菌が残り、翌年に胞子を飛散する感染源となります。
 落ち葉による感染では、気温が温かくなる3月中旬以降に子のう胞子が形成され、その後の降雨により飛散して葉や果実へ二次感染します。落ち葉による二次感染による葉や果実の病斑を目視で発見される時期は5月上旬ごろとされています。
 秋季防除を徹底したことで、4月に「芽基部りん片」の感染が確認できないにもかかわらず、5月上旬に急激に黒星病の病斑が発見される場合には、原因の一つに「落ち葉」で潜伏した菌による影響が疑われます。

・前年より潜伏した菌による感染時期
 ・芽基部りん片に潜伏菌
 感染時期:3月下旬~(3 月上旬頃から分生子が形成)
 対策:秋季防除の実施。
 芽基部病斑によりりん片が固着し ている芽の除去。その後も継続的に芽基部、花そう基部や葉、葉柄、幼果などに黒いすす状の病斑の除去。除去した病斑は、園外に運び出して処分する。
 ・落ち葉に潜伏した菌
 感染時期:葉や果実への二次感染は4月下旬~。5月上旬頃から病斑となって現れる。(3 月中旬以降に子のう胞子が形成される。)
 対策:落ち葉の処理

落ち葉の処理方法

 梨の黒星病対策として落ち葉の処理方法では、従来労力のが大きい園外への持ち出し。又は地中深くに埋める方法が適正とされていました。
 これに加え、新たに労力が少ない処理方法として草刈機による粉砕処理。トラクター(ロータリー)での土壌へのすき込みにおいても有効であることが確認されています。

従来からの処理方法:
1.園外への持ち出し
 落ち葉を集め、農園の外に運び出して処分を行います。園外まで運び出した後、腐葉土となるまで放置し、後に堆肥として有効活用します。
2.地中深くに埋める
 園に深い溝(20~30cm程)等を掘り、落ち葉を入れて土を被せて完全に埋設します。トラクター等の耕うん範囲より深く埋めることで、落ち葉が露出することなく、園内処分でも問題が発生することなく堆肥化することができます。
 しかし、深く掘る作業のため専用の機械がないと非常に多くの労力を必要とします。
3.土壌でトラクター等で耕す
 土壌の地表面をトラクターで耕うんにより、土と落ち葉を撹拌することで地中の浅い範囲に落葉を埋めます。
 手軽に作業を行える一方で、落ち葉が地表に露出しやすく、ある程度は落ち葉による影響を受けます。

新たな処理方法:
4.草刈機による粉砕処理
 乗用・自走式草刈機により落ち葉を原形をとどめた落葉を残さないように粉砕します。
作業方法:
 乗用草刈機、又は自走式草刈機(時速約2km)を使用して粉砕処理を行う。
 2回以上実施するとより効果が高い。
5.中耕すき込み処理
 トラクター(ロータリー)を使用して土壌にすき込みます。
作業方法:
 低速ギア(時速1km以下)。中耕震度5cm程度で落ち葉が地表面に浮き上がらないようゆっくり行う。
6.粉砕+中耕すき込み処理
 乗用草刈機、又は自走式草刈機を使用して粉砕処理を行った後、トラクター(ロータリー)を使用して土壌にすき込みます。
作業方法:
 乗用草刈機、又は自走式草刈機(時速約3km)を使用して粉砕処理を行った後、中速ギア(時速1.5~2km以下)。中耕震度5cm程度で落ち葉が地表面に浮き上がらないようゆっくり行う。

落ち葉処理の実施時期

・10月下旬 事前準備
 落ち葉を収集や通路へかき出し易いよう、果樹や支柱等の根元を除草剤や刈払機で除草を行う。
・11月下旬~2月末(完全落葉後) 落ち葉の処理
 ・落ち葉のかき出し
 草刈機やトラクターで処理できない果樹や支柱の根元に堆積した落ち葉を熊手やブロアーを使用して処理しやすい場所(通路)にかき出す。
 ・落ち葉の処理の実施
 処理方法1~6の方法により落ち葉を処理を行う。
・3月中旬まで 処理の見直し
 原形をとどめた落葉が多くみられる場合、再度落ち葉の処理を行う。
新たな落ち葉の処理方法
事前準備の草刈り 10月下旬 事前準備
 落ち葉を収集や通路へかき出し易いよう、果樹や支柱等の根元の除草を行います。梨の根元から多量のひこばえが生えている場合では刈払機で邪魔となるひこばえも併せて除去します。
落ち葉のかき出し 11月下旬~ 落ち葉のかき出し
 熊手やブロアーを使用して果樹の根元など、草刈機やトラクターで処理できない落ち葉を処理できる通路にかき出します。
 果樹園周囲の防風ネットや溝等にも落ち葉が残らないよう注意します。
 雑草が生え残っていると落ち葉が引っ掛かり、落ち葉が多く残ります。
草刈機による粉砕処理 ・落ち葉の処理の実施
 草刈機による粉砕処理
 自走式草刈機等で通路に書き出された落ち葉を粉砕します。自走式草刈機で落ち葉が舞い上がりにより粉砕漏れがないよう、落ち葉は山盛りにせずに低速で作業を行います。
トラクターによる中耕すき込み ・落ち葉の処理の実施
 中耕すき込み処理
 トラクター(ロータリ)で中耕震度5cm程度で落ち葉が地表面に浮き上がらないようゆっくり行います。
 根元付近ではロータリにより根を巻き込むことがあるため、果樹との距離に注意して作業を行います。
落ち葉残りの確認 3月中旬まで 処理の見直し
 雪解け後など落ち葉が原形を留めて残っていないか最終確認をします。黒く映るのが雪の重みで地面に圧着された落ち葉です。
 地面に圧着された落ち葉は収集や草刈機により粉砕は難しいため、トラクター(ロータリ)で中耕すき込みを行います。
・新たな処理方法を試した所感
・草刈り機(バーナイフタイプ)
 作業により飛散し易いため、低速での作業が必要。また、粉砕するという能力は低いため落ち葉の原型を無くすためには複数回の作業が必要。

・草刈り機(ハンマーナイフタイプ)
 草を粉砕して除草する機械であるため、一度の作業で落ち葉の原型がほぼ無くなる。
 飛散による未処理が発生し難いため、中速でも作業に支障がなかった。
 フレールモアでもほぼ同様ではないかと思われます。

・トラクターのロータリーによるすき込み
 地面が耕されるため、冬季の剪定作業で足元が泥濘(ぬかるみ)作業効率が悪くなります。
 特に冬に雪や雨が多い地域では、長期に渡り泥濘ます。

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