ナシ黒星病の秋季防除
梨に大きな被害をだす黒星病の防除では、発生源となる病原菌を越冬させ春に病原菌を飛散させないため、秋の落葉時に行う秋季防除が重要です。秋の秋季防除では、病斑の除去と感染し易い効果的な時期に薬剤散布を実施することが重要です。
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秋季防除の重要性
黒星病防除において、菌密度が高くなるほど病勢が強くなり薬剤効果を得難くなります。このため、越冬等による第一次感染源を減らすことで春の病原菌の感受性の高い時期に菌密度を低くし、効果的な薬剤防除を行うことで防除を達成します。一度菌密度が高くなった果樹園では、薬剤の種類や量を増やしてもその年は薬剤防除で十分な効果を得る事は不可能と言っても過言ではありません。(経験談)
・薬剤による秋季防除
花芽は9月~12月上旬にかけて、りん片がゆるみ隙間ができるため、黒星病菌に感染し易くなり、葉に形成された病原菌が降雨により鱗片生組織の露出した芽に感染します。
感染した花芽(芽基部りん片)は、越冬し翌年の第一次伝染源となり黒星病の発病(病勢)が多くなります。発生(菌密度)が多いと防除が困難になるため、予め第一次伝染源を減らすことが重要となります。
秋季防除期のりん片の状態 | |
鱗片生組織 非露出芽 葉芽・花芽の芽基部まで鱗片枯死組織に覆われている芽。黒星病の感受性が低い。 |
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鱗片生組織 露出芽 りん片がゆるみ隙間が出来て鱗片生組織が露出した芽。 9月から12月上旬(特に11月上旬に多い)に発生し、黒星病の感受性が高い葉芽・花芽。 |
・薬剤効果を高める準備
夏季に伸びた徒長枝の葉芽・花芽の芽基部への薬剤効果では、枝の数が多いことで枝密度が高く、上方向に伸びているため薬剤付着が悪くなることで、十分な薬剤効果を得難い傾向があります。
秋季防除前に予め不要な徒長枝減らし、枝密度を減らす。必要な徒長枝は横に倒す(横方向に誘引する)などの粗剪定を行うことで薬剤効果を高めることが出来ます。
特に葉が残った時期での不要な徒長枝減らし、園外に運び出すことで果樹園内の落葉量を減らすことが出来ます。
薬剤効果高める準備 | |
粗剪定の実施(不要な徒長枝の除去)) 徒長枝の薬剤付着を高めるため、不要な徒長枝は秋季防除前に粗剪定により除去して枝密度減らします。また、残す徒長枝も可能な範囲で倒して(誘引して)おきます。 |
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葉の付いた徒長枝の処分 黒星病が感染した葉は、園内に放置すると翌年の感染源となります。 粗剪定により切り落とした葉が付いた徒長枝は、葉が付いたまま(葉が外れる前に)園外に運び出して処分を行います。 |
・病斑除去による防除
葉に感染した黒星病は、葉裏に黒いすすをつけ点々とした黒い病斑が現れます。葉が落葉しても黒星病は死滅せずに越冬し、春に気温が上がると菌を飛散させ第一次伝染源となります。
これを防ぐため、病斑がある落ち葉は園芸へ運び出す。地中に埋設するなどして菌を飛散しない対策が重要となります。詳しくは、次ページ「ナシ黒星病対策の落葉処理」にて紹介しています。
・秋季防除の実施時期
具体的な実施時期:10月(収穫終了後)~11月中旬ごろに薬剤の残効(約14日)を考慮し、2・3回実施する。
・黒星病の感染適温(平均気温 15~21℃) → 10 月上旬~11 月 上旬
・鱗片生組織の露出した芽の多い時期 → 10 月中下旬~11 月中旬
・感染源である葉の落葉終了 → 11 月末頃
・秋季防除に適した薬剤
秋季防除においても黒星病に対する効果は、基本的に通常の防除と変わりません。しかし、秋季防除に使用する薬剤について、薬剤種類による翌年の発症件数について大きな差がないという検証結果があります。(差があるという検証結果もあり、検証条件等により異なる。)
秋季防除での薬剤使用について、翌年の収穫期までの使用回数としてカウントします。使用回数の少ない薬剤や、耐性菌リスクの高い薬剤使用を避け、多少効果が低い薬剤などからも選択します。
・秋季防除に適した薬剤
ドキリンフロアブル、キノンドー、オーソサイド水和剤80、ベルクートフロアブル、ベルクート水和剤、オキシラン水和剤 など
耐性菌リスクが少なく使用回数の上限が多い薬剤を使用します。
・秋季防除に適さない薬剤
・DMI(EBI)剤
アンビルフロアブル、スコア水和剤10、インダーフロアブル、マネージ水和剤、オーシャイン水和剤、オンリーワンフロアブル など
・ストロビン系薬剤
ストロビードライフロアブル、アミスター10フロアブル、ファンタジスタ顆粒水和剤、ナリアWDG など
この他、耐性菌リスクが高く使用回数の上限が少ない薬剤は使用を控えます。
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