デランフロアブル

 BASFジャパン株式会社の果樹用殺菌剤「デランフロアブル」は、有効成分「ジチアノンフロアブル」の殺菌剤です。 梨の防除では、主に黒星病防除の他、幸水梨の等の芯腐れ症に高い防除効果が期待できます。
・デランフロアブルとマシン油剤と混用について
 デランフロアブルは昭和35年よりメルクデラン水和剤として登録され、フロアブル製剤化されたものです。
 梨の防除では春先(3月)の防除開始時に主に黒星病防除や、4月や5月には黒星病や芯腐れ症防除に用いられる機会の多い殺菌剤です。春先の防除では、カイガラムシやハダニ類などの越冬害虫防除の為に用いられるマシン油剤を使用する際に混用する殺菌剤として用いられることがあります。
 デランフロアブルとマシン油剤の混用使用では、混用によりデランフロアブルの黒星病防除効果が高くなるデータがメーカーより公表されています。

・デランフロアブルとマシン油剤と混用効果
・耐雨性の向上
 有効成分ジチアノンを降雨処理した残留分析によると、デランフロアブル単用使用と比較して混用することで有効成分が多く抽出された。(単用区3.04μg/g:混用区6.34μg/g)

・残効性の向上
 有効成分ジチアノンを散布21日後の残留分析によると、デランフロアブル単用使用と比較して混用することで有効成分が多く抽出された。(単用区31.05μg/g:混用区1.98μg/g)

・発病葉率の低下
 発芽前防除で使用するとき、デランフロアブル単用使用と比較して混用するとその後の黒星病の発生が少なくなった。(単用区0.3%:混用区1.3%:無散布2.3%。3月2日に使用し、その後慣行防除をした6月1日調査結果)

・デランフロアブルとマシン油剤と混用による弊害
 梨の防除においてマシン油剤は発芽後に使用すると薬害が発生するリスクがあります。マシン油剤と混用する場合。発芽前(3月上旬頃まで)に使用することが必要となります。

メーカーサイト(外部リンク):BASFジャパン株式会社 > 殺菌剤 > デランフロアブル > リーフレット(なし黒星病対策版)
https://crop-protection.basf.co.jp/
sites/basf.co.jp/files/2021-01/
20210129-delan-nashi-kurohoshi.pdf


デランフロアブルとマシン油剤の混用事例

混用製品名(マシン油剤)
クミアイ機械油乳剤95
クミアイアタックオイル
トモノールS
ハーベストオイル

デランフロアブルの黒星病に対する効果

 デランフロアブルを単剤で用いた時の梨の黒星病に対する効果としては、予防薬として用いられる薬剤です。予防薬として他の薬剤と比較して特別高い効果(防除価)があるわけではありません。しかし、耐雨性が高く残効が比較的長く持続すると考えられている薬剤です。
 体質によって皮膚かぶれを生じることがあり、かぶれる体質の人は使用時(散布時)や使用後も施用した作物の作業が出来ない場合があります。

黒星病の防除価の値について詳しくは
果樹栽培ナビ > 梨の病気被害と対策 > 黒星病 > ナシ黒星病対策専門資料
> ナシ黒星病の予防薬の防除効果・残効性・耐性菌発生リスク一覧表

デランフロアブルの心腐れ病に対する効果

 デランフロアブルは主に幸水梨に発症する芯の部分が茶色に腐敗する芯腐れ症に高い効果がある薬剤です。
 芯腐れ症の防除では、高い効果があったパルノックス水和剤(ジラム・チラウム水和剤)が生産終了してから、多くの地域でチオノックフロアブル・トレノックフロアブル(チオラム水和剤)が防除体系に組み込まれています。しかし、チオノックフロアブル・トレノックフロアブルでは従来のパルノックス水和剤と同等の効果を得ることは出来ません。
 デランフロアブルはこの芯腐れ症に対して既存の薬剤の中で最も効果のある薬剤の一つです。地域によっては防除体系による芯腐れ症対策として、デランフロアブル・トップジンM水和剤(チオファネートメチル水和剤)・ベンレート水和剤(ベノミル水和剤)の何れか又は複数を落花から幼果期に用いています。

・デランフロアブルを芯腐れ症に用いるメリット

・単用で黒星病と芯腐れ症に効果
 芯腐れ症に高い効果のある薬剤の中で、デランフロアブルは黒星病にも効果が期待できることから単用で芯腐れ症と黒星病の同時防除をすることができます。
・殺虫剤と混用し易い
 単用で黒星病と芯腐れ症に効果があるため、黒星病の特に発生時期である4月下旬から5月にかけて殺虫剤を混用した殺虫と殺菌(芯腐れ症、黒星病)の同時防除により省力化が図れます。
 他の芯腐れ症に高い効果のある薬剤では、トップジンM水和剤は既に黒星病が耐性を獲得しているため効果が期待できない。ベンレート水和剤は元より黒星病に対して効果が低く期待できない。

・デランフロアブルを芯腐れ症に用いるデメリット

・作業者の皮膚かぶれ問題
 デランフロアブルを芯腐れ症対策として用いる幼果期は、摘果作業などで作業者が触れて作業することが多い期間と重なります。このため、防除実施者だけでなく、その後の摘果作業をする作業者も体質により皮膚かぶれがおきる場合があります。
・薬剤コスト(薬剤価格)
 デランフロアブルは近年値上がりが大きい薬剤の一つです。2025年4月での参考価格でスピードスプレー1車(500リットル)当たり、3,500円程度の薬剤コストが必要となります。
 このコストは、黒星病又は芯腐れ症のどちらか一方を目的とした薬剤価格としてはかなり割高となる薬剤です。また、黒星病の効果は程々といったところであるため、黒星病主体では費用対効果が低い薬剤となります。


芯腐れ症の効果について詳しくは、
果樹栽培ナビ > 梨の病気被害と対策 > 梨の果肉が茶色など変色する主な症状 > 芯腐れ症 > 梨芯腐れ症の予防と対策方法
> 心腐れ病に効果のある薬剤


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