スピードスプレーヤの買替と新車価格

 果樹の防除作業に使用するスピードスプレーヤは、約10年程度から故障が頻発し、買換えなどの検討に迫られます。買替検討にあたり、使用する圃場により機能や性能差で価格に大きな差があります。主要メーカーの新車価格と買替に関する主な情報です。

・果樹栽培におけるスピードスプレーヤ存在

 梨をはじめ多くの果樹栽培において、スピードスプレーヤは最も高額な農業機械です。
 使用頻度も多く、耐用年数(法定耐用年数7年、実使用年数7~10年)が短いことから定期的に買換えや、長く使用する(10年を超えての延命)には多額のメンテナンス費用が必要となる農業機械です。
 このため、個人所有だけでなく、複数農家による共同所有や、防除作業自体を共同防除などで実施する地域もあります。

・故障リスク増大が防除に与える影響

 薬剤防除は実施するタイミングが非常に重要です。このため、スピードスプレーヤの故障と修理期間により防除実施タイミングが遅れると、病気や害虫による被害発生や十分な防除効果を得ることが出来なくなります。
 経年劣化による故障リスクの増大に備え、故障時の対応方法(代替機を借りられるかなど)を含め買換えの検討が必要となります。

・経年による代表的な保守内容と故障個所

 0~5年
 エンジンオイル、オイルフィルター、エアフィルター、LLCなどの交換、注油箇所へのグリスアップなどの定期メンテナンスが必要
 5~10年
 定期メンテナンスを怠った時:エンジン・動噴ポンプ焼き付き、エアフィルターの穴あき、ユニバーサルジョイントの摩耗(がたつき)、ラジエターの詰まり
 その他:バッテリーの劣化、ベルト類の延び・ひび割れ・破断。
 11~15年
 定期交換を怠った時:ラジエターの穴あき
 その他:動噴ポンプのパッキンの劣化・ピストンの破損、耐圧ホース破断、エンジンの油漏れ(ガスケットの交換)、タイヤのひび割れ
 16年~ タイヤのパンク、タイヤホイールの腐食、ステアリング・ステアリングロッドの破損、エンジン、駆動部、その他主要部の故障
 実体験として10年(約20年使用)を超えてからの修理では、タイヤ交換2本やタイヤホイールの交換1本。動噴ポンプのオーバーホール。動噴ポンプの修理。ベルト類の交換。耐圧ホースの交換など、修理だけで80万円程必要となりました。この80万円という金額は運が良く少ない方だと考えています。
 修理では部品供給が終了していることで故障個所によっては修理パーツが特注扱い。パーツ単位での修理が不能など、ユニットごとの載せ替えが必要となり高額となる場合があります。
 例えばステアリング等が壊れ部品供給がないとき、修理に40万円ほどかかる場合もあります。

・新車と中古の検討

 スピードスプレーヤの新車は非常に高額なため、条件さえ合えば中古による購入検討もあります。
 機械は古くなると、メンテナンスを適切に行っていても故障リスクが大きくなります。しかし、古い機種や中古であっても複数台を所有している。近所から容易に借りることが出来るなど、故障時の対応方法があれば故障リスクが大きくでも実害はありません。
 管理人も以前使用していたスピードスプレーヤは、故障時に貸し借りが出来たことから20年以上使用しました。その間(10年を超えてから)、特に重要な防除の際に故障し、修理を待つ余裕がなく借りて防除を行うことが2回ありました。

スピードスプレーヤの選び方

・圃場の形態
 果樹棚、立ち木、わい化など果樹の形態。圃場が平地、傾斜地。住宅地に隣接する立地など使用する環境により必要となる風量や散布範囲の調整機能、ドリフト低減型(薬剤の園外への飛散防止型)など適しているものが必要となります。

・液剤タンクの容量
 液剤タンクは500L、600L、1000Lなどがあります。
 液剤タンクが大きいほど一度に防除を行う面積が大きくなります。また、比例してエンジンなど出力も大きくなることで作業速度が速く、作業全体の時間が短縮されます。しかし、価格が高価になるだけでなく、車体が大きくなることで圃場内での小回りが利かなくなります。

・最大吐出量(噴霧量)
 搭載された動噴ポンプの吐出量が大きいほど、散布できる噴霧量(L/min)を大きくすることができ、作業速度が速くなります。
 実際に使用する際の噴霧量は、搭載された動噴ポンプの能力(吐出量)内で、噴霧ノズルの個数と形状(穴の大きさ)、噴霧圧力により決まります。

・送風能力
 噴霧を飛散させるための送風装置の風量です。立ち木等では大きな風量が必要となります。
 しかし、過剰な風量だと果樹棚では落果被害が発生するため出力を下げるなど調整が必要となります。

・走行方式
 3輪、4輪(4WD、4WS)の他、傾斜地や軟弱地に強い6輪(6WD)などがあります。

・共同所有か個人所有か
 スピードスプレーヤは高価な農業機械のため複数農家による共同所有とすることがあります。
 各農家のスピードスプレーヤの使用時期は重なるため、共同所有であれば作業速度(液剤タンクの容量や噴霧量)を考慮する必要があります。
 個人所有であれば、作業速度を大きく求めず最低限の能力を備えて価格を抑えるなどの検討方法もあります。

主要メーカー(500Lシリーズ)2024年9月参考価格

 主要メーカーが販売する500リットルシリーズの内、最も低価格な機種の価格と主な性能です。

・丸山製作所

 農機や水ポンプなども扱う大手メーカーです。
 乗用型で棚専用としてシンプルな最低限の出力による、低価格から製品を販売しています。
機種:E502DX-1
価格:税込¥3,280,200(税抜¥2,982,000)
エンジン出力 kW : 9.0
送風能力 m3/min: 290
最大吐出量 L/min: 42.3
噴霧量 L/min: 31.52
適用作業:棚園
その他:ノズル14個、ノズル4分割、4WD、

・共立

 やまびこが扱う「共立」ブランドのスピードスプレーヤです。国産第一号のスピードスプレーヤを開発したメーカーです。400リットルのクローラーによる歩行型も販売しています。
機種:SSV5150F
価格:税込¥4,774,000円
エンジン出力 kW: 16.7
送風能力 m3/min: 500
最大吐出量 L/min: 60
その他:ノズル16個、ノズル4分割、4WD、パワステ、保護フレーム、シートベルト

・ショーシン

 スピードスプレーヤの専門メーカーで、スピードスプレーヤの代表的な主要メーカーの一つです。
機種:3S-V512X
価格:税込¥3,025,000(税抜¥2,750,000)
エンジン出力 kW: 10.0
送風能力 m3/min: 320
最大吐出量 L/min: 59
適用作業:棚園・わい化園向き
その他:3輪

機種:3S-C523X
価格:税込¥3,718,000(税抜¥3,380,000)
エンジン出力 kW: 16.1
送風能力 m3/min: 525
最大吐出量 L/min: 63
適用作業:棚園・わい化園向き
その他:4輪、ノズル4分割

スピードスプレイヤーによる効果的な防除方法
 ・薬剤撹拌や散布性能を発揮させる使用方法は、スピードスプレーヤーの使い方
  ・薬剤付着特性を考慮した薬剤散布方法は、スピードスプレーヤーの散布方法
   ・薬剤の付着(定着)状況は、農薬の付着(定着)の状況
    ・薬剤散布ムラを防ぐためのチェック項目は、スピードスプレーヤーによる散布ムラ防止
     ・買換えの検討では、スピードスプレーヤの買替と新車価格

スピードスプレーヤーのメンテナンス方法については、
姉妹サイト:農業機械メンテナンスナビ>スピードスプレイヤーのメンテナンス方法 にて紹介しています。(新規ページで開きます。)

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