水やり

 夏場の果樹への水不足は、生育に大きな障害を与えます。
 しかし、実は単純な水問題だけでなく、見た目に違いは判断しにくいものの、熱波による熱帯夜も、果樹に大きな影響を与えます。
 適切な、水遣り(散水作業)により、水分の供給と、熱波による生育不良を解消します。
 但し、土壌の水不足は果樹の許容範囲であれば適度に不足することも果樹には大切です。

果樹の水不足による影響

・水不足による障害
 ① 水分枯渇による立ち枯れ被害
 ② 水分不足による、果実への水分不足(コスコス)
 ③ 地割れによる果樹の根毛切断
 被害の深刻レベル ① > ② > ③

・熱帯夜による生育不良
 ④ 果実の成長不良(実が大きくならない)
 ⑤ 色付きの不良(リンゴが赤くならない。ブドウが赤紫にならない。色付きにムラが発生する。)
 多くの果樹栽培で、重要視しているのは、②と④⑤です。
 ①は、水捌けの良い砂丘地、扇状地でしか殆ど発生せず、③は果樹の成長の為に偶(数年に1度程度)にであれば発生しても良いからです。
 直売が主の梨栽培では、特に②
 市場出荷の梨栽培では、特に④ を経営上の理由から重視します。

・水分供給の目安
 果樹園内の土壌が常に水分を帯びていると、根腐れ発生や土壌感染型の病気の蔓延に繋がります。特に有機肥料を多く使用する果樹園では、夏場に土からきのこ(茸)が生えたりします。
 この為、適度に果樹園内の土壌が乾燥することも大切です。

 ・土壌のひび割れ(土壌が土の場合に限る)
 土壌が乾燥すると地表面がひび割れが入ります。晴天が続くと数日でひび割れが発生します。しかし、果樹の根は地表面にあるわけではないので、地中に水分がある限り大きく気にする必要がありません。
 ひび割れの幅が1cm程度(指先が入る)に成長してから、散水を開始します。

 ・最終降雨日からの日数
 土壌を乾燥させることも必要であるため、梅雨(十分な降雨があった日)から約20日間は散水を検討する必要はありません。
 梅雨が終了した後、降雨状況を確認して散水を行いますが、一度完全に土壌が乾燥した後(20日以上降雨なし)であれば、少々の雨は降っていないのと同然に散水を継続して行います。
 十分な降雨として認識するのは、シトシト一晩降る雨。バケツをひっくり返したような夕立などです。

・土壌乾燥の重要性
 果樹に限らず多くの植物は、土壌の水分が不足すると新たな水分を求めて地中深く根を拡げます。
 この根の成長は、長期的に水不足に強い成長となるだけでなく、深い根による樹木の安定。広がり難い地中部分に根が広がることにより効率的な養分吸収を図ることになります。
 この根の成長の顕著な例として稲作栽培があります。
 水田を常に水を満たすと、稲の根が地表面に広がる為、穂を付けた時に自重を支えられず稲が倒れます。この解消に生育途中に意図的に水田を乾燥させ、根の成長を促す作業を行います。

・熱帯夜解消の方法
 散水することで水の気化熱(蒸発熱)を利用することにより温度を下げます。実際に、人為的に果樹園全体の気温を下げることはほぼ不可能です。
 しかし、果樹栽培での温度管理は僅かな変動を起こすだけでも効果が期待できます。
 栽培箇所を周囲の気温より相対的に下がるよう、みずやり(散水)を行い打ち水効果により、水の蒸発する際の気化熱の吸収によって温度が下がります。
 方法:
 夕方からみずやり(水遣り・散水・打ち水呼称は様々)を行います。このとき、果樹栽培への散水(水の供給)を兼ねて行います。
 みずやりは、果樹園全体に満遍なく広がるように行い、水の量ではなく、散水面の面積(地表が濡れている面積)が広くなることを重視して行います。
水やり
水やり資材写真 灌漑パイプ
 管理人か水やりに使用するスプリンクラー用の潅水パイプです。通常スプリンクラーの地下に埋設されているものです。元々あった資材のため、水やりに流用しています。
パイプの取付写真 灌漑パイプの延長
 各パイプは凹凸の組み合わせになっておりジョイントにより延長出来るようになっています。
ジョイント写真 パイプのジョイント部分
 凹(メス)側のジョイントです。
 大きく溝が掘られていて、溝に合わせて突(オス)側を差込つなぎます。
ジョイント結合写真 ジョイントの結合
 溝に合わせて傾かないようにしっかし差込ます。
ジョイント固定写真 ジョイント固定
 メス側のジョイント部分を回して固定します。
ジョイント固定写真 ジョイントの戻り防止
 パイプが回りジョイントが外れないように、ピンを差込ジョイントの回転防止を行います。
 使用中に外れると水の重量と延長したパイプの重量が加わる為、繋ぎなおすのは大変な作業になります。
放水写真 放水部分
 大量の水が放水されるため、放置すると水の力で土が流されて放水部分に穴があきます。土の流出防止にベニア板をあてて、水の力を分散します。
 パイプの先端に丈夫な麻袋を取り付けても土の水の力を分散できます。
スプリンクラー取付部写真 スプリンクラー取付部
 本来、スプリンクラーをつける場合の、取付部分です。蓋を外すと、スプリンクラーが差し込み、固定できる溝が掘られています。
スプリンクラー取付写真2 スプリンクラー取付部
 スプリンクラーを取り付けないため、水が必要な部分の蓋を外して、パイプの途中でも放水を行います。
パイプの延長写真 スプリンクラー取付部
 スプリンクラーを取付部を利用し、放水部分にパイプを延長しました。
 果樹園の真ん中に一本パイプをのばし、必要な箇所のスプリンクラー取付部をパイプの延長で果樹園の大半に水遣りができます。

ページトップに戻る