防除(病害虫の駆除)

 果樹園芸での病気被害の防止や害虫の駆除を行い、品質の向上と収穫量の向上を行います。現在の市場価値では、見た目と味の重要度が高く、通常の農業では必須の作業といえます。
 また、味と収量を求めた品種改良により生み出された現在の果樹は病害虫被害に弱いため、重要な作業となります。
 ここでは、薬剤(農薬)を用いた化学的な防除を紹介していますが、効果を高めるためには、環境的な防除を行うことも大切です。
環境的な防除について、病害虫の防除の種類へ。農薬については「農薬の種類と選び方」へ。

農薬による化学防除

・防除の方法
 果樹園では、SS(スピードスプレイヤー)を使用して薬剤(農薬)を散布することにより行っています。趣味の果樹栽培の多くでは、噴霧器を用いて行い、本職の管理人も使用する範囲次第では小型の噴霧器を用いてピンポイントで防除を行う場合もあります。

・防除のポイント
 通常、農業で行われる化学的な防除は、発生した病害虫に対して駆逐(被害の拡大防止)を目的に行う防除と、病害虫が発生しないように予防目的で行う防除に分かれます。説明の為、前者を駆逐防除、後者を予防防除とします。

・駆逐防除
 発生(被害)が確認されてからでも、防除が容易な病害虫や、生態から予防が出来ない病害虫、発生が稀な病害虫、予防防除で予防しきれなかった病害虫に対して行われる。
例)アブラムシ類 ・・・・  駆逐が容易だが飛来するため発生予防が難しい。
  カミキリムシ類 ・・・・ 飛来するため発生予防が困難。

・予防防除
 発生(被害)が確認されれからでは駆逐が難しい、被害範囲が大きい等の理由により農業経営に深刻な打撃を与える病害虫に対して行います。
 例)ダニ類 ・・・・ 発生による被害が甚大。駆逐が難しい。
   ハマキ虫類 ・・・・ 駆逐が難しい。
   黒星病 ・・・ 多発発生後の駆逐が困難。

 薬剤防除では、防除の目的となる病害虫に効果のある薬剤(農薬)を選択し、ムラ無く散布することが大切です。特に注意が必要な問題としては次の点があります
 ①特効薬と予防薬
 殺ダニ剤や、殺菌剤には特効薬と予防薬があります。パッケージをよく読むと判りますが、予防剤は当然に発生した病害虫に効果は無く(効果が弱く)発生前(予防防除)に使用するものです。
 一度発生した病害虫(駆逐防除)には特効薬を用います。

 ②希釈倍数
 薬剤(農薬)は、希釈倍数を確認して使用します。希釈倍数には、1,000倍表記しているものや、1,000~2,000倍として希釈範囲に表示してあるものがあります。濃く使用すると効果が良いのではなく、希釈倍数の範囲で使用しないと薬害が発生します。
 また、希釈倍数の範囲でも、1,000倍で撒くのと、2,000倍でたっぷり撒くのでは後者の方が効果が期待できます。

 ③散布範囲
 生息、繁殖場所が特定されている病害虫の防除を除き、通常はムラ無く均一に薬剤(農薬)散布を行います。
 植物に直接散布するときは、葉の裏側が薬剤(農薬)がかかり難く、病害虫も繁殖しやすいことから葉の裏に散布できるよう心がけて行います。
 通常は、下から上方に向けて薬剤を散布することで、まず葉の裏に付着し、落ちてくる薬剤で葉の表面に付着します。
 スピードスプレーヤーを用いた化学防除
果樹の防除写真 SS(スピードスプレイヤー)を用いた防除作業

左右・上方に薬剤をムラ無く散布しています。
噴霧写真 側面の拡大写真

複数のノズルから噴霧噴射されています。大きさは違えど、蓄圧式の噴霧器と同じ理屈です。
ノズル写真 噴霧ノズル部分

 突起の中心に小さな穴が空いており、そこから勢いよく薬剤が飛び出します。
 ノズルの下の部分が空洞なのは、送風機の風が通り為です。
 薬剤の勢いと、送風機の風の勢いで広範囲に散布されます。
送風機の画像 送風機の部分

 SS後部、送風機の部分です。
 複数の羽により強烈な風を発生させます。

・防除(病害虫の駆除)
 ・ 環境的な防除については、病害虫の防除の種類
  ・農薬については、農薬の種類と選び方
   ・ダニに対する農薬については、殺ダニ剤の選択

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