裂けた幹や主枝(裂開)の修復

 太くなった幹は主枝は木質部の比率が大きく一度裂けると元通りに修復することは困難です。しかし、表皮部分の形成層だけであれば結合する場合があります。表面の形成層が結合すれば樹勢はある程度回復させることができます。
 太く大きな幹や主枝であっても、実りによる荷重増大や雪害によって大きく裂けることがあります。裂けた箇所を放置すると雨水による浸食により枯れるだけでなく倒木等の危険も増します。
 また、一度裂けた幹や主枝を修復しても木質部の腐食が早くなり、内部の空洞化が起こり易くなります。

・裂けた幹や主枝の状態
 太い幹や主枝が裂けると大きく広がるため露出する断面が大きくなります。裂けることで内部の木質部にすき間ができ、雨水が流れこむことで急激に内部からの腐食が進みます。

・修復を促す処置
1.作業準備
 裂けた個所(裂開)は、重量が大きいため断面を合わせる作業も容易ではありません。
 特に大きな幹では重量により作業に危険があるため、先に枝や先端部分を取り払うなどして重量を軽くして作業を行います。

2.断面を整える
 折れた先を持ち上げて断面が合うか確かめます。
 多くの場合、断面は細かい裂け等が邪魔をします。邪魔となる木質部を削る等して断面の形成層が重なるように整えます。

3.木質部の接着
 殺菌癒合促進剤(トップジンMペースト、バッチレート等)を内部の木質部に塗ります。殺菌癒合促進剤は、断面の殺菌・防水・すき間埋め・接着の役割を兼ねます。

4.支柱を立てる
 重量のある幹や主枝では、接合後に支えておくための支柱を立てます。

5.裂開部を合わせる
 断面を合わせ支柱で支え、外周に殺菌癒合促進剤(トップジンMペースト、バッチレート等)を塗ります。
 ずれ防止のための固定と防水のためテープを巻きます。補強に更にロープ等で固定します。

6.樹勢調整
 裂開と接合により強度が低下しただけでなく、養分の流れが悪くなり樹勢が大きく低下しています。
 枝を減らし樹勢バランスを整えます。また、数年にわたり経過を観察して果実を実らせない。または、減らすなどして樹勢バランスをとります。

7.代替えの用意
 太い幹や主枝は例え枯れなくても内部が腐食がすすむことがあります。しかし、安易に除去すると樹勢がバランスが大きく乱れます。
 裂開し修復した箇所が枯れない間に代替えとなる枝を育て、何れ(数年後に)入替を行います。
 内部の腐食が侵攻しない場合や、樹勢が十分に回復した場合は、無理に入れ替える必要はありません。

8.入替
 代替えとなる枝が十分な太さに育ったら裂開した方は除去します。
 除去作業の際、養分の流れがない箇所(凸部)が残ると後に病気感染(材質腐朽菌)し健康な部分にも広がります。
 除去作業では切り落としの切断面が大きくなっても養分の流れがない箇所が残らないように除去します。

裂けた幹(裂開)の修復

裂けた主枝 ・裂けた主枝
 主枝に大きな荷重が加わったことにより主枝の根本から裂けて幹が大きく傷ついています。
 重量があり作業があり、作業に支障があるときは先端の枝を払うなどして軽くして作業を行います。
断面を整える1 ・断面を整える1
 折れた先を持ち上げて断面が合うか確かめます。
 断面は細かい裂け等が邪魔をします。邪魔となる木質部を削る等して断面の形成層が重なるように整えます。
 断面の内部に邪魔をする裂けが残る状態で無理に合わせようとすると、抵抗により繋がっている部分が切断するため注意が必要です。写真では剪定鋏を使用して、大きめの裂けを除去しています。
断面を整える2 ・断面を整える2
 写真では剪定挟が入らなかった奥などを、先端が細い摘果鋏を使い小さな裂けを除去します。
木質部の接着 ・木質部の接着
 殺菌癒合促進剤(トップジンMペースト、バッチレート等)を内部の木質部に塗ります。殺菌癒合促進剤は、断面の殺菌・防水・すき間埋め・接着の役割を兼ねます。
裂開部を合わせる ・裂開部を合わせる
 断面と合わせ外周に殺菌癒合促進剤(トップジンMペースト、バッチレート等)を塗ります。
 手を離すとすぐ断面が広がる場合、先に支柱等で断面が広がらないように支えます。
裂開部の固定 ・裂開部の固定1
 ずれ防止のための固定と防水のためテープを巻きます。
支柱により支える ・支柱により支える
 長期により裂開が開かないよう保護するため、重量が負荷がかからないよう支柱で支えます。
 支柱は支える重量に応じて、鉄管の他、角材や竹に枝受けを組合せます。写真では角材に枝受けを取付けて支えています。
裂開部をロープで固定 ・裂開部の固定2
 長期に渡り多少の負荷が発生してもずれや裂開部が広がらないようにロープ等でしっかり固定します。
 写真の黒い紐は丈夫で数年に渡り耐久性があるハウスバンドを使用しています。
樹勢調整 ・樹勢調整
 裂開と接合により強度が低下しただけでなく、養分の流れが悪くなり樹勢が大きく低下しています。
 枝を減らし樹勢バランスを整えます。また、数年にわたり経過を観察して果実を実らせない。または、減らすなどして樹勢バランスをとります。

・経過観察
 太い幹は自己修復されない木質部が大きいため徐々に内部から腐食が侵攻します。
 腐食の内、材質腐朽菌によるものは健康な部分にも感染が広がります。また、幹では腐食に伴い倒木する危険も増すため、代替えとなる枝を育てて切り落とすなどの検討が必要となります。
折れた枝、裂けた幹(裂開)の処置
 ・折れた枝をくっつけるには、折れた枝の修復方法
  ・太い枝や幹が裂けた時は、裂けた幹(裂開)の修復

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