折れた枝の修復方法

 雪害による大きな荷重が加わる。剪定により強く誘引すると枝が折れることがあります。折れた枝であっても、一部が繋がっていれば養分が供給されるため樹勢は低下しますが成長が続くため折れた枝をくっつける修復や、代替えとなる枝が育つまでの一時処置として利用することが出来ます。
・折れた枝の状態
 樹木の枝や幹は、外側から表面を覆う表皮・養分が通い活発に細胞分裂をする形成層・成長を終え樹木の構造を支える木質部で構成されています。
 枝が折れても一部でも形成層が繋がっていれば養分の供給を続けようとします。しかし、枝が折れると形成層の大部分が破断するだけでなく、繋がっている一部の形成層も露出するなど表皮や木質部から保護されなくなるため乾燥や雨水による影響により形成層の働きが阻害されます。

・折れた枝が修復する働き
 形成層は細胞分裂が活発であり、一度破断した箇所でも切断面を合わせ固定しておくことで再び結合します。結合するためには、相応の期間が枝が枯れることなく成長し続けることが必要となります。
 枝が枯れることなく成長し続けるためには、折れた後も繋がっている形成層の量と機能が維持できるように保護されていることが重要となります。
 しかし、形成層が繋がって修復しても成長を終えた木質部は修復されないため、(細い枝の一部を除いて)構造を支える強度は元通り修復することは出来ません。

・軽度の折れの処置
 剪定作業で曲げた枝が後日折れるなど、枝の半分程度が繋がる軽度な物であれば無理に繋げなくても折れか箇所に殺菌癒合促進剤(トップジンMペースト、バッチレート等)を塗りテープを巻くなどの簡単な補強を行うことでそのまま利用する(果実を実らせる)ことができます。
 殺菌癒合促進剤と補強テープは、感染症予防と防水だけでなく、表皮を失い露出した箇所を日光や乾燥から保護する役割を果たします。
 損傷の程度によりますが、既に剪定作業を終えた代替えとなる枝がない場合にはそのまま殺菌癒合促進剤塗り1年間利用します。1年間の状態を見てそのまま枝を残すか、剪定作業で枝を入れ替えるかを判断します。

・修復を促す処置
1.断面を合わせる
 形成層を位置を正確に合わせて断面を繋げることで、双方の形成層の成長により活発に修復が促されます。
 折れだ際の木質部の裂け等が邪魔となり、形成層が合わさらない時は邪魔となる木質部を削る等して形成層が重なるように断面を合わせます。

2.防水/感染症対策
 合わせた断面の外側に殺菌癒合促進剤(トップジンMペースト、バッチレート等)を塗ります。
 折れた断面の大きさにもよりますが、基本的に枝程度の太さであれば断面内部は塗らずに断面を合わせ、外周のみ薬剤をぬります。主枝・幹のように太い場合、断面の木質部面積を大きいため木質部のみ殺菌癒合促進剤を塗ります。

3.固定する/防水処理を行う
 合わせた断面がずれないよう、ビニールテープなど防水テープで巻いて固定します。
 ビニールテープで固定する際、2.で使用した殺菌癒合促進剤の上から巻きます。作業で殺菌癒合促進剤が取れても気にせずに上から巻きつけます。
 強度不足や荷重でずれる恐れがある場合、更に添え木となるものを当ててテープなどで巻いて固定する。折れた先を支えため支柱等を立てるなどして固定します。

4.荷重負荷の軽減、樹勢調整
 折れがことにより強度が不足することから荷重を軽減するため枝を減らします。また、十分な強度なるまで伸びた新梢により再び負荷がかからないよう適時枝の切り落としを継続します。
 枝の量や葉芽、花芽は相応の養分を必要とします。折れたことで養分の流れ(樹勢)が悪くなった分、枝の切り落とします。また、特に花芽(果実)は大きく養分を消費するため結実数に注意します。

軽度の折れの処置

・軽度の折れ
 剪定による強い誘引により折れた枝です。
 剪定作業時には折れなくても、固定したことで数日後に折れることもあります。
 雪(着雪)や鳥の飛来により折れることもあります。
  ・折れた箇所
 枝全体の2分の1程度が繋がっていれば、そのまま枝を利用することが出来ます。(梨の場合)
  ・保護
 樹皮がなく露出した箇所に殺菌癒合促進剤(トップジンMペースト)を塗ります。
  補強
 ビニールテープを巻き、折れた個所の補強を行います。
 殺菌癒合促進剤とビニールテープにより、感染症予防、水による浸食、日光、乾燥から保護されます。

折れた枝をくっつける修復

・完全に折れた枝
 折れて垂れ下がった枝です。
 折れた際に大半が破断し、大きなダメージを負っています。
・断面を合わせる
 形成層がより多く合わさるように断面を繋げます。
 折れた際に裂けた部分が邪魔をする場合には、邪魔となる部分を削り合わせます。
・殺菌癒合促進剤を塗る
 内部に塗る殺菌癒合促進剤は接着剤の役割を果たします。
 外側に塗る殺菌癒合促進剤は防水と感染症予防の役割を果たします。
 太い枝のみ内部の木質部にも殺菌癒合促進剤を塗ります。
・テープによる固定
 断面がずれないよう、ビニールテープで巻いて固定します。
・果樹棚や支柱による固定
 断面に荷重による負荷がかからないよう、支柱を立てる。果樹棚を利用する等して折れた先を固定します。
・樹勢調整
 枝の量や葉芽、花芽は相応の養分を必要とします。折れたことで養分の流れ(樹勢)が悪くなった分、枝等を切り落とします。
 大きく折れた枝では、花芽(果実)は全て落とします。
・経過観察
 折れだ枝の修復では、その後の経過観察が重要です。
 単純に枯れるだけでなく、病気感染、樹勢の不足・過多、新梢等が伸びることでの負荷の増大に注意を払います。
 特に材質腐朽菌を含む感染症が見られる場合、他所へ感染が拡大するため早期に除去が必要となります。
 経過次第で代替えをなる枝を成長させるなど、太い枝となれば数年単位の経過観察と入替の準備期間が必要となります。

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