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折れた枝、裂けた幹(裂開)の処置

 雪害などにより枝や幹が折れて放置すると、折れた先が枯れる。傷ついた箇所から病気感染するなど大きな被害となります。折れた枝は傷口を塞いで繋がるように修復を促す。露出した傷は癒合促進剤による病気の感染予防を行います。
・枝折れ裂開後の処置の基本
 枝などが折れて内部組織が露出していると、表皮で覆われずに露出している箇所は病気の感染源となります。
 一度折れて破断した箇所であっても、細胞活動が活発な樹皮直下の形成層であれば、断面を合わせておけば自ら結合して修復することが出来ます。しかし、内部の成長を終えた木質部について修復は難しく、木質部の比率が大きな断面となった場合には修復は難しくなります。

・枝折れの修復の手順
1.断面を丁寧に合わせる。ささくれ等ですき間が大きい場合、ささくれ等を除去して表面を整えて断面を合わせます。この時、大きく除去すると合わせた断面のすき間が大きくなるため除去し過ぎないように注意します。
2.断面のすき間に水などが入らないよう、合わせた断面の外側に癒合促進剤を塗る。
  断面が大きい場合、内部の木質部にも癒合促進剤を塗る。※1
3.テープで巻いて断面がずれないよう固定すること併せ、傷となった部分に水が浸入しないようにする。
3.強度を保つため添え木をとなるものを当てて固定する。
4.重量の軽減と折れた先の樹勢を調整するため、折れた先の枝や花芽を減らす。
5.経過を観察する。
 →折れた先が枯れた場合
 材質腐朽菌等が感染し折れた元まで悪影響を与えるため、諦めて切断して断面に癒合促進剤を塗ります。
 →折れた先が生きている
 断面が修復され、断面部分の枝が太り十分な強度となるまで維持します。枝が成長して太ると巻かれたテープが締め付けられて食い込むため、十分な強度となるまで適時テープを外して巻きなおします。

※1癒合促進剤の使用目的
 断面の外側に塗ることで、水の侵入を阻む防水の役割を果たします。また、断面にすき間が残る場合、すき間を埋めることが出来ます。
 木質部は修復に時間がかかる(又は修復が見込めない)ため、雑菌等の感染予防と接着効果による強度を得るために使用します。

・主な癒合促進剤
 癒合促進剤には、殺菌成分を含む農薬として登録された物と殺菌成分を含まない物が市販されています。
・殺菌成分を含むもの
 ・トップジンMペースト
 日本曹達 、住友化学園芸の商品。当果樹円で使用している癒合促進剤です。
 薬剤がオレンジ色なため、塗った個所が目立ちます。特に病気に弱い果樹に使用する癒合促進剤です。
 ・バッチレート
 日本農薬の商品。殺菌作用のある有機銅を含む癒合促進剤です。特に病気に弱い果樹に使用する癒合促進剤です。
・殺菌成分を含まないもの
 ・カルスメイト
 富士商事の商品です。傷口に雨水など触れて雑菌の感染を防ぐ効果があります。
 ・新キヨナール
 キヨナール工房の商品です。傷口に雨水など触れて雑菌の感染を防ぐ効果があります。
 癒合促進剤には紹介している物の他、多くの種類が市販されています。
 不必要に殺菌成分を含む製品を使う必要はありませんが、病気に弱い果樹の使用では、農薬の登録内容を確認して使用します。
 剪定作業等の通常での使用方法については、果樹の栽培方法(梨の育て方) > 梨の剪定 > トップジンMペースト 使い方(殺菌癒合剤)にて紹介しています。

・折れた枝の修復
 指の太さ程度までの枝が折れた場合、自己治癒力のある形成層の割合が断面に対して大きいため結合して修復できる場合があります。
 実際に修復できるかは、木の種類、折れた時期、折れた際に破断せずに残った形成層の割合、接合部の状態樹勢等の影響がるため修復できるかは状況により異なります。

・裂けた幹(裂開)の修復
 太くなった幹は木質部の比率が大きいため、断面を合わせても元通り修復することは困難です。しかし、表皮部分の形成層部分だけであれば結合する場合があります。
 表面の形成層のみ結合すれば樹勢はある程度回復します。しかし、木質部が担う木を支える強度が足りないため表面上(形成層)が結合したあとも倒木(再裂開)に注意が必要です。また、内部の木質部の腐食が早くなり内部の空洞化が起こり易くなります。

・倒木した木の修復
 一度倒伏した樹木は木を支える根が切断されています。このため、倒木を引き起こしても自立することが出来ないため、支柱等で木を支える必要があります。
 また、根が切断されていることで樹勢が大きく低下しています。根による樹勢とのバランスを取るため、葉や枝を減らして調整します。葉や枝を減らすと、本体が軽くなるため自立する能力が大きく低下した樹木の負荷を軽減することが出来ます。

折れた枝、裂けた幹(裂開)の処置

折れた枝の修復方法 折れた枝の修復方法
 荷重や強く誘引するとことで枝が折れても、一部が繋がっていれば養分が供給されるため枝をくっつけて修復することができます。
裂けた幹(裂開)の修復 裂けた幹(裂開)の修復
 太い幹は木質部が大きく元通り修復することは出来ません。しかし表皮部分の形成層部分だけであれば修復できることがあります。
・折れた枝、裂けた幹(裂開)の処置
 ・折れた枝をくっつけるには、折れた枝の修復方法
  ・太い枝や幹が裂けた時は、裂けた幹(裂開)の修復

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